あなたの子ですが、内緒で育てます
 けれど――
 
「ジュストなら来ないわよ」

 現れたのはデルフィーナだった。

 ――まさか、デルフィーナのお腹にいる子供が、ジュストの心を読んだ?

「そうよ」

 あっさり、私の心を読むデルフィーナ。

「王宮に入れず、困っているんじゃないかしら」

 逃げるための馬車や護衛を手配するため、ジュストは王宮からいったん出ていた。
 それを、デルフィーナは知っている。 
 デルフィーナは、兵士たちに目くばせした。
 さっきの夢を思い出す。
 私の顔を醜くすると言ってなかった――?

「セレーネが暴れたから、剣を抜いたと、ルドヴィク様には報告するわ」

 兵士の手が、剣の柄に触れた。
 デルフィーナは、私の顔に傷をつけるつもりだ。
 ジュストを最初から捕まえるつもりはなく、私の元へ来れないようにしているだけ。
 ザカリア様の息がかかるジュストを、罪人に仕立てるあげるのは難しい。
 ただ口実が欲しかっただけなのだ。
 私を傷つけるための――
 逃げなくてはいけないのはわかっている。
 けれど、逃げ場がない。
 
 ――誰か、助けて。

 壁際に追い詰められたその時。
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