あなたの子ですが、内緒で育てます
「もう、このまま……ここで死んでしまったほうがいいのかしら……」

 その場から、立ち上がる気力もなく、泣きながら口にした言葉は、誰にも届かない。
 届かないと思っていた。
 けれど。

「それは困る。俺を領地から呼びつけておいて、死を選ぶとは、どういうことだ」

 うずくまっていた私にかけられた言葉は、優しいものではなかった。
 けれど、それは、私を助けるためにやってきたのだと、わかる言葉。

「あなたは……」

 プラチナブロンドと青い目、彫刻のように均整(きんせい)のとれた顔立ち――胸元に銀のペンダントが見えた。
 シルバーのペンダントトップは透かし彫り細工の紋章で、身分を示す。
 紋章の階級は公爵。
 つまり、この方は――

「ザカリア」

 王でもないのに、まるで王であるかのような 不遜(ふそん)な態度。
 彼は不機嫌そうな顔をして、私に名前を告げた。
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