あなたの子ですが、内緒で育てます
「今のあなたと同じ。妃になれなかった娘に、両親は冷たかった。もちろん、友人たちは離れていったわ」
「デルフィーナ……」
「でも、本当の無能はセレーネのほうだったわね。だって、王妃の地位を手に入れても、ルドヴィク様の心までつかめなかったもの」

 デルフィーナの言葉が、心に突き刺さった。
 たとえ、実家の家族から無能な娘と呼ばれても、夫のルドヴィク様さえ、私を必要としてくれたなら、それでよかった。
 妻として、王妃として、尽くし生きてきた。

 ――でも、ルドヴィク様はデルフィーナを愛していて、私を必要としていない。

 なにも言えなくなった私を見て、デルフィーナは満足そうに笑いながら、去っていった。
 
 ――ルドヴィク様とうまくいっていると思っていたのは、私の勘違いだったの?

 デルフィーナにルドヴィク様がなびいたのは、一時的なものだと思っていた。
 もしや、それ以前から、ルドヴィク様は私に対して、愛情を持っていなかったのだろうか。

「そんなはずは……」

 ない、と言い切れなかった。
 愛されていたと言える自信がなかった。
 だって、私は『無能』だから。
 涙がこぼれて止まらなかった。

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