あなたの子ですが、内緒で育てます
 わたくしを馬鹿にしていた令嬢たちが、今では目の前で、歯の浮くようなお世辞を並べていた。

「デルフィーナ様が王妃になると思っていましたわ」
(汚い手を使って、王妃になったくせに偉そうね)

「可愛らしいところが、ルドヴィク様の目に留まったのでしょうね」
(平凡なくせに、男に取り入るのだけはうまいんだから)

 言っていることと、思っていることがまったく違っていた。
 
 ――わかっていたことだけど、気に入らないわ。

 なおも、延々と続くお世辞。
 それに飽きた頃、令嬢たちに告げた。

「ねえ、皆さん。ご存知? わたくし、王の子を身籠っていますでしょう? わたくしの子供は、心が読めますのよ」

 全員の表情が凍り付く。

「王妃を侮辱していいと思っているの? 全員、牢屋にぶち込んで! 不快よ!」

 悲鳴と謝罪の声が王宮に響く。

「汚い牢屋で反省なさい!」

 王の子を身籠り、わたくしは王妃の地位を手に入れただけではない。
 次の王の母という地位も手に入れた。
 そして、今や、ルドヴィク様は力を失い、わたくしの子が次代の王に決定している!
 わたくしの権力は揺るがない!
 怖いものなど、なにもなかった。
 
「あとはセレーネだけ。あの女をわたくしの前に跪かせてやるのよ」 
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