あなたの子ですが、内緒で育てます
 私の子とデルフィーナの子のどちらが原因で、ルドヴィク様の力が消えたのか不明だ。
 つまり、次の王が誰なのかわからない。
 争いが起きる。
 その争いは、貴族たちを巻き込むだろう。
 そして、デルフィーナに心を読まれて、殺害の疑いをかけられたなら、また私は小さな部屋に閉じ込められる。
 最期はザカリア様のお母様のように……

「私は戻りません」

 手をお腹に触れさせた。
 私は自害する道を選ばない。
 子供を宿したからといって、ルドヴィク様の愛情が、私に戻る保証はないのだ。
 デルフィーナが心を読める力を持つ限り、私も子供も、この先、ずっと不利な状況が続く。

「ザカリア様の領地で匿っていただけませんか。その代わり、私の子が王となる際には、後見人として、ザカリア様を指名いたします」

 実家の侯爵家に権力を渡さず、ザカリア様に渡すということだ。
 王の後見人になれば、宮廷で権力を振るうことができる。
 私を匿ってもらえるだけの、取引材料にはなる。
 
「わかった。応じよう」

 私とザカリア様の取引は成立した。
 身支度を整えて、一階へ行くと、すでにザカリア様が宿屋の支払いを済ませていた。
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