あなたの子ですが、内緒で育てます
 次代の王が生まれると、王は力を失う。
 以前なら、遠くを見る能力で、ザカリアを監視することができた。
 ザカリアの力は特別だ。
 そして、たった一度しか使えないからか、次代の王が生まれても、力を失うことがない。

「子供を奴に近づかせてはならんな」

 もし、俺とデルフィーナの子になにかあれば、力を失っていないザカリアが王になってしまう。

「それだけは許さん」
「ルドヴィク様。どうかなさって?」

 デルフィーナが部屋に現れた。
 
「いや。お前の腹の子を心配していたのだ」
「まぁ、どうしてですの?」
「ザカリアだけは、力を失っていない。今、なにかあれば、ザカリアが王になる」
「そ、そんな!」

 ザカリアの元へデルフィーナが使者を送ったと聞いた。
 奴を怒らせ、なにかあってからでは遅い。
 今のところ、ザカリアに王位を狙う様子はないが、いつ、気が変わるかわからない。

「どんな力を持っていますの?」
「忌まわしい呪われた力だ。口にするのもおぞましい」
「呪われた力……。だから、ザカリア様は王宮の外に出されたのね」
「ザカリアに関わらないようにしろ。子供が生まれてからは気を付けろ」
「え、ええ。わかりましたわ」
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