あなたの子ですが、内緒で育てます
 気の強いデルフィーナだったが、俺の警告が本物であることがわかり、真剣な顔つきになった。
 子供がいなければ、王妃でいられなくなるのはデルフィーナも同じ。

「でも、セレーネがザカリア様の領地に、潜んでいるのを見つけたら、連れ戻しても構いませんわよね?」
「本当にザカリアのところにいるのか?」
「今、調べさせていますわ」

 ――セレーネがどこにいても構わない。だが、ザカリアのそばだけは不快だ。
 
 俺の心の声が聞こえたのか、デルフィーナの顔が険しくなった。

「もし、セレーネがザカリアの元にいたなら、王宮に戻す」
「それは、嫉妬ですの?」
「セレーネは俺の物だ。ザカリアには渡さん」
「なにをおっしゃっていますの? セレーネは、もう王妃ではありませんのよ!?」

 わかっているが、これだけは譲れなかった。

「わたくしの侍女にしてよろしいなら、セレーネを王宮に、連れ戻しても構いませんわ」
「それはお前の好きにしろ」

 そう言うと、デルフィーナは満足したのか、静かになった。 

「ザカリア様にセレーネを奪われ、嫉妬なさったのかと勘違いしてしまいましたわ」
「俺が嫉妬?」
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