あなたの子ですが、内緒で育てます
「そんなことない。ぼく、お手伝いしてる。この間は遠くにある雨雲を見つけた。だから、みんな、雨に濡れずに済んだんだよ」

 王の子であるルチアノは、遠くを見ることができる。
 私のお腹にいた時から、わかっていた能力だけど、実際に使われると戸惑ってしまう。

「今、秋でしょう? みんな、忙しいのよ。ルチアノはお母様のお手伝いをしましょうね」
 
 収穫期の領地は忙しい。
 私とルチアノも、食事の手伝いをしたり、昼食を運んだりしていた。
 活発なルチアノは、果物や野菜の収穫大好きで、農夫たちとも仲が良い。

「お手伝いなら、ザカリア様のお手伝いをしたい」

 ――これだもの。

 がっくり肩を落とした。
 少し前までは、私の言うことを素直に聞いていたルチアノだけど、今では自分の意見をはっきり言うようになった。
 目を離した隙に、なにをしでかしているか、わからない。

「ザカリア様、ぼく、役立っているよね?」
「まあまあだ」
「えー……」

 不満そうなルチアノに、ザカリア様が言った。

「ルチアノ。あまり力を使いすぎるな」
「どうして?」
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