あなたの子ですが、内緒で育てます
 紛れもないルドヴィク様の子供である証拠だった。
 ショックを受ける私のそばに近づき、デルフィーナが耳元で囁いた。

「ねえ、セレーネ。結婚して終わりではございませんのよ」

 今まで私を『王妃』と呼んでいたのに、デルフィーナは『王妃』と呼ばなくなった。
 そして、お妃候補時代に嫌がらせをしていた時と同じ、酷い態度をとる。
 
「ルドヴィク様。お腹の子がセレーネ様に怯えていますわ」

 そして、ルドヴィク様のことも『陛下』ではなく、名で呼ぶ。
 すでに二人は親しい仲なのだとわかった。

「セレーネ様は、わたくしを殺そうとしているのです!」
「それは、本当か?」

 ルドヴィク様は冷たい目を私に向けた。

「そんなこと思っていません!」
「ルドヴィク様。わたくしのお腹の中の子が、セレーネ様の心を読みましたわ。『デルフィーナは夫を奪った。殺してしまいたい』と思っています!」
「なんだと!」

 デルフィーナはルドヴィク様を名前で呼び、私を王妃と呼ばない。
 身内同然の待遇を約束されているのだろう。
 私に告げる前に、すべて準備されいたのだ。

 ――いいえ。今、たくらんだことではないわ、
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