あなたの子ですが、内緒で育てます
「わたくしやロゼッテにみすぼらしい姿でいろと?」
「そんなのイヤ~」
「大臣を宮廷から追放して! 二度と宮廷に来ないでちょうだい!」

 父の代から仕えていた大臣は、苦渋に満ちた表情で俺に言った。

「ですから、セレーネ様を廃妃にするなと、申し上げたのです。国王陛下にも責任がございますぞ!」

 セレーネの名を聞いたデルフィーナは、平静ではいられなかった。

「そういえば、結婚前のご令嬢がいたわね。大臣と大臣の一族を奴隷の身分に落としなさい!」 

 大臣は覚悟していたのか、なにも言わなかった。
 ただ、庇わなかった俺に、残念ですと言って、その日、大臣の一族は王都から姿を消した。

 ――セレーネが残した孤児院も救貧院もなくなり、王都はますます、荒れていった。
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