あなたの子ですが、内緒で育てます
 だが、部屋の隅にベールをかぶり、ルチアノとともに話を聞くセレーネの姿が目に入った。
 ジュストが剣を手にし、俺を見る。
 やめろ、と目で合図する。 
 二人に血を見せたくなかったのもあるが、少し冷静になった。
 息を吐き、椅子に深くもたれた。

「大臣たちが使者を送ったことに、王妃は気づいているはずだ」

 使者は床にひれ伏し、黙って、うつむいたまま。

「謀反は死罪だ。しっかり巻き込んでくれる」
「すでに王妃は、ザカリア様に謀反の罪を着せようと動いているかもしれません」

 俺のことを目障りだと思っている国王と王妃。
 豊かな領地を奪い、自分たちの贅沢な生活のために、この地を荒らす……考えただけでも腹が立つ。

「使者を途中の道で始末させるべきでしたね」

 ジュストは冷たい目で使者を見る。
 使者を帰し、兄上に言い訳をしたところで、王妃は兄上をうまく丸め込むだろう。
 俺が死ねば、デルフィーナ王妃の子の即位が確実なものになる。

「あの……。ザカリア様。大臣たちの使者が、謀反ではなく、違う目的でここへ来たことにすれば、よろしいのではないのでしょうか」

 セレーネが前に歩み出る。
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