あなたの子ですが、内緒で育てます
 正真正銘、王の子であることがわかり、使者の顔に喜びの色が浮かぶ。

「お母様、ザカリア様。ぼく、王さまになるよ。そしたら、みんな、殺されないのでしょう?」

 姿は幼くとも、ルチアノは話を聞き、自分なりに考え、周りの者を守ろうとしていた。

 ――過去にこだわる俺より、ルチアノのほうが王に相応しい。

「わかった。俺は後見人として、ルチアノとセレーネを守ろう」

 二度と戻りたくないと思っていた王宮。
 戻ることへの迷い。
 それは今、二人を守りたいと思う気持ちに変わっていた。
 
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