あなたの子ですが、内緒で育てます
「セレーネ、眠れないのか」
「ええ……。ザカリア様もですか?」
「一度眠ったが、目が覚めた」
王宮に戻るのが不安なのは、私だけではなかった。
ザカリア様には、一生癒せない心の傷がある。
ご結婚されないのも、引きこもり殿下と呼ばれても、王宮へ戻らなかったのは、お母様の件が忘れられないからだろう。
――巻き込んでしまった。
このまま、領地で静かに暮らせたはずの人だったのに。
「申し訳ありません。私がしっかりしていれば……」
「それは俺のセリフだ。兄上や王宮から、ずっと目をそむけて生きてきた。むしろ、王族の俺こそ、セレーネに謝るべきだと思う」
与えられた領地を繁栄させたザカリア様が、今の王都の惨状に悔やまぬわけがなかった。
でも――
「ザカリア様は王宮に戻るのが、本当はお辛いのではないですか?」
私が言い当てたからか、ザカリア様は心中を語った。
「……いまだに、母が死んだ時の夢を見る。ジュストに頼まれ、セレーネを助けたのは、助けられなかった母の代わりだ」
夜気の寒さからか、微かに声が震えて聞こえた。
「それで、自分が母を助けられなかった罪を帳消しにしようとした」
「ええ……。ザカリア様もですか?」
「一度眠ったが、目が覚めた」
王宮に戻るのが不安なのは、私だけではなかった。
ザカリア様には、一生癒せない心の傷がある。
ご結婚されないのも、引きこもり殿下と呼ばれても、王宮へ戻らなかったのは、お母様の件が忘れられないからだろう。
――巻き込んでしまった。
このまま、領地で静かに暮らせたはずの人だったのに。
「申し訳ありません。私がしっかりしていれば……」
「それは俺のセリフだ。兄上や王宮から、ずっと目をそむけて生きてきた。むしろ、王族の俺こそ、セレーネに謝るべきだと思う」
与えられた領地を繁栄させたザカリア様が、今の王都の惨状に悔やまぬわけがなかった。
でも――
「ザカリア様は王宮に戻るのが、本当はお辛いのではないですか?」
私が言い当てたからか、ザカリア様は心中を語った。
「……いまだに、母が死んだ時の夢を見る。ジュストに頼まれ、セレーネを助けたのは、助けられなかった母の代わりだ」
夜気の寒さからか、微かに声が震えて聞こえた。
「それで、自分が母を助けられなかった罪を帳消しにしようとした」