あなたの子ですが、内緒で育てます
 ――ザカリア王弟殿下。七年前も、わたくしを邪魔した目障りな男。
 
 七年前、セレーネが行方不明になった時も王宮にいた。
 逃がしたのは、あの男に決まってる。
 
「ふん。でも、ここで終わりよ。謀反の罪を着せて、領地を没収してやるわ」

 ザカリア様の領地は魅力的だった。
 わたくしに貢がせていた貴族たちも、最近では財産を隠すようになり、国王陛下に呼ばれない限り、王宮に寄り付かなくなった。 
 あの豊かな領地の収入も欲しい――

「ロゼッテ。ザカリア様を捕らえ、ここに連れて来られたら、あなたを殺そうとしていると言うのよ?」
「どうして?」
「ザカリア様は、あなたを女王にさせたくないと思ってる悪い人間だからよ」
「えー。こわーい」
「そう、とっても怖い人」

 ロゼッテは怯えていたけど、これくらい言っておかないと、ザカリア様に勝てない。

「セレーネの居場所も知っているかもしれないし、ちょうどいいわ」

 領地を奪い、セレーネの居場所を吐かせて、奴隷になるか、死ぬか、選ばせてあげるわ。
 これで、わたくしに逆らえる者はいなくなる。
 自分の勝利を確信していた。
  
 ――七年ぶりの再会が近づいていた。
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