あなたの子ですが、内緒で育てます
 その姿を見ればわかる。
 ロゼッテ王女と同じ――ルチアノのほうが年上に見えた。

「なんだと!」
「嘘おっしゃい!」
「お初にお目にかかります。ルチアノです。ようやく父上にお会いできました」

 ルチアノのしっかりした挨拶を聞き、ルドヴィク様が動揺している。
 信じきれていない二人に告げる。

「その証拠にルドヴィク様。あなたの力は消えたはずです」

 あえて、ルドヴィク様を『国王陛下』とは呼ばなかった。
 これで、私の目的はわかったはず。
 
「女王になるのは、わたくしの子、ロゼッテよ!」
「ロゼッテ王女とルチアノは同じ年齢です」
「まさか……」
「王宮を追われた時、私のお腹にルチアノが宿っていました。けれど、陛下の愛情も後ろ盾も失っていた私は、この子を王宮で育てる自信がなかった」

 デルフィーナは騒ぎ出した。 

「王位に相応しいのはロゼッテよっ! それに陛下の子供とは限らないわ! 偽者っ! 偽者に決まってるわっ!」

 デルフィーナを無視した。
 今、私が語りかけるのは一人だけ。

「力を失った王は王位から退かねばならない――そうでしたわよね?」

 王宮を去るのは私ではなく、ルドヴィク様、あなたです。
 再会と同時に、七年越しの別れをルドヴィク様に告げたのだった。
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