あなたの子ですが、内緒で育てます
 仲良く昔話をするために、戻ってきたわけではないことはたしか。
 復讐される心当たりがあるルドヴィク様は、自分は悪くないというように、正当化し始めた。

「セレーネ。お前もこの国の貴族令嬢として生まれた。デルフィーナは王の血を引く子を身籠った。放って置くわけにはいかなかったのだ」

 ――だから、私を捨てたの?

 デルフィーナにどれだけ嫌がらせをされても、殺されそうになっても、助けてくれなかった夫。
 再会したら、昔のようになんて夢見ていたわけではなかったけど、これが本当の姿だ。
 結局、自分の身が危うくなれば、デルフィーナすら捨てる。
 私がいなくなった後も、変わらぬ生活を続けていたのか、荒れた町並みに反して、部屋はきらびやかに飾られていた。
 それを見て、私は心を決めた。
  
「ええ。そうでしょう。王の血を引く子供は王になる可能性があるのですから」

 ルドヴィク様が首を傾げたのに対して。デルフィーナがいち早く察して、顔色を変えた。

「もちろん、私の子にも王になる資格があります」
「うん? お前の子だと?」
「ルチアノと申します。あなたの子です」

 ルチアノが前に出る。
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