あなたの子ですが、内緒で育てます
「それも王の子らしい」
「本当に王の子か?」

 そんな声を耳にしたルチアノが、声のしたほうを向いて笑った。

「おじさん。おじさんの家はどこ?」
「俺の家か? 俺の家はすぐそこの、青い屋根の家だ」
「棚の上に置物がひとつ。その棚と棚の間に挟まっているものがあるね。うーん。硬貨かな? 金色だから金貨だね!」
 
 ルチアノは隠したお金の場所を言い当てた。
 言い当てられた男の人は、顔色を変えた。

「うああああ! 妻に内緒のへそくりがっ!」
「アンタ! そんなところに隠してあったのかいっ!」

 妻に弱いらしく、震え上がっていた。
 ルチアノの力を目の当たりにした人々は、噂が噂を呼び、なぜか失せ物探しが始まった。

「猫ちゃんを探してほしいの。顔にぶち模様がある猫です……」
「泣かないで。えーと、どの辺りでいなくなった?」
「おうちの前でいなくなったの」
「港のほうにいるよ。帰ってきた船から魚をもらっているみたい」
「ルチアノ様、指輪を失くしたんですが」
「キッチンの棚の上に置いてあるよ」
「そういえば、顔を洗った時、外していました!」

 ――などなど。
 
 王の子であることは、疑いようもなく――そして、とうとう。
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