あなたの子ですが、内緒で育てます
 ルチアノは王位継承者として、次の王として、期待される存在となったのだった。

『早く国王陛下が退位されて、ルチアノ王子が王になってくださればいいのに』

 そんな声が、聞こえ始めた。
 国じゅうに民の声が届き、貴族たちはルチアノの存在を無視できなくなった。
 そして、王宮へ『王子のご機嫌伺い』にやってくる貴族たちが増えた。
 その貴族たちの中には――私を捨てた実家、侯爵家もいた。
 父と兄は、七年前、私を切り捨てたことを忘れたかのように、平然と姿を現した。

「セレーネ! よくやった。さすが我が娘よ! これで侯爵家は安泰だな」
「なぜ、早く戻らなかった。王子がいるのであれば、話は別だ」

 二人は、私を道具として見ていた。
 今もそれは変わらない。 

「《《侯爵》》。ルチアノの後見人はザカリア王弟殿下です」
「なんだと!?」
 
 ザカリア様が控えており、その鋭い目に、二人は気圧され、息を呑む。

「七年前、娘を庇うことなく切り捨て、なにもできなかった侯爵家が、俺を差し置いて、後見に名乗りをあげるのか?」
「め、滅相もございません」
「ですが、その……セレーネの父と兄ですので」
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