あなたの子ですが、内緒で育てます
 これで、父と兄は、生活のため、侯爵家が所有する領地に引きこもり、領地経営を真剣にやるしかなくなる。

「それでは、侯爵。王宮の外まで、ご案内しますよ」

 二人はうなだれたまま、ジュストに連れられ、出ていった。

「ザカリア様、ありがとうございました。一人では、きっと負けていました」

 苦しかった胸のうちが、少し軽くなったような気がした。

「負けてもらっては困る」
「わかっています。ルチアノのためにも、私は強くなると決めたのですから」
「それなら、俺はセレーネのために強くなろう」
「ザカリア様はじゅうぶん強いですわ」

 冗談を言うようなタイプではないのに珍しい――微笑みを浮かべたその時。

「わたしのこと、ルチアノが馬鹿にしたぁ~。あの子を牢屋に入れて~!」

 ロゼッテ王女の泣き声が響き、王宮内が騒然とした。

「兵士たち! ルチアノ王子を捕まえなさい!」
 
 デルフィーナが、兵士に命じる声が聞こえる。
 ルチアノの身に危険が迫っていた。
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