あなたの子ですが、内緒で育てます
 やはり、思ったとおり。
 王子の血縁のとして、宮廷で権力を握ろうと考えている。

「私に、父も兄もいません」
「セレーネ、お前っ!」
「なんという恩知らずな!」

 二人にあるのは恩ではない。
 馬鹿にされ続けた辛い思い出だけだ。

「恩があるとするなら、七年前、私を助けてくださった方々だけです。今後、あなた方の宮廷への出入りを禁じます」

 宮廷への出入りができてこその貴族。
 貴族としての権利を奪われ、二人の顔はみるみるうちに青くなった。 

「ま、待て! セレーネ。誤解があるようだ。七年前、デルフィーナ王妃の味方をしたのは、侯爵家のためだ」
「そうだ。お前だって、侯爵家の後ろ楯がなかったら困るぞ!」

 なにを言っているのだろうか。
 ザカリア様も呆れている。

「ジュスト。侯爵たちを叩き出せ。俺と争いたいと思っているようだ」
「王弟殿下と? め、滅相も……」

 すでに、宮廷の権力図は変わりつつあった。

「ルチアノを侯爵家の好きにはさせません。宮廷の権力争いから離れ、お父様とお兄様が、心穏やかに暮らせるよう祈っておりますわ」
「少し早い隠居生活だと思えばいい」

 爵位までは取り上げなかった。
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