私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
自分の立場も、今どうすればいいのかも。
清加さんから感じる『あなたの母にはなりませんよ』という空気。
弟達の母は私の母とは違う、上品で育ちの良さそうな女性だった。
まるで、西洋人形のような人で、隅から隅まで手入れされていないと気が済まないような―――私は微笑んだ。

「はい。清加さん。これからお世話になります。よろしくお願いします」

ホッとしたように清加さんが息を吐いた。
私がきちんと距離をとれる子だとわかったからだろう。
愛人の子を、それも自分の婚約者を奪った相手の子供を愛せるわけがない。
きっと弟達も同じだ。
父親と過ごす時間を奪っていた疎ましい存在。
私のことを嫌っている。
そう思っていた。
それなのに。

「よろしく。姉さん」

「お姉さんができて嬉しいです」

清加さんは驚いて自分の息子達を見た。
綺麗な人形のような顔をした子が二人並んでいた。
嫌になるくらい私達は似ていた。
そして、私より年下なのに唯冬(ゆいと)柊冴(しゅうご)も賢かった。
自分達が私を姉と呼べば、周囲も認めるしかないことをわかっていて、全員に聞こえるように私を姉と呼んだ。

「よろしくね。唯冬、柊冴」

私は微笑む。
全員が私を『渋木のお嬢様』だと認識した瞬間だった。
清加さんと父の姉である伯母だけは顔を歪ませていた。
彼女達が私の味方にはなることはない。
けれど、私は微笑む。
私が笑っていれば、だれも私を傷つけることはできないと悪魔が教えてくれたから。
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