あすかは真夜中水底なり

本のことは多分好き。中学入ってからは部活ばかりで全然読めてないから多分。多分、高校とか大学とか、働く?とかしたら読まなくなっちゃうと思う。それくらいの好き。

 

 本は逃げ場な感じがする。学校は私にとって窮屈な場所なんだ。友達も限定的だし、部活だって関わる人って意外と少ない。委員会だって逃げ場にはならなくて、言っちゃえば本当は家にも逃げ場なんてなくて。なんでだろう、自分の部屋の布団なのに落ち着けなくて、「落ち着く場所ってどこですか?」って質問、毎回トイレって答えてる。別にトイレも落ち着けないのに。

 

 ふと思い立って、私は体操着のまま、しかも図書館で借りた本を持ったまま、まだみんながプールサイドでバタ足なんかをしてる、まだ誰も入ってないプールに、シャワーもしないまま飛び込んでいた。

注目されたかったんだろうか、私は。

 

 心臓がひゅっと、冷たさを感じた。脳みその前に心臓が先だったのがなんか、理由はないんだけど嬉しい、なんでかな。

 

 私たち、水着だと浮きやすいんだけど、体操着だとそうでもないみたいだ。なるほど、これは確かに川とかに落ちたら溺れるんだろう。

 

 あと、どうして本ごと飛び込んじゃったんだろう。水に一度つけちゃったけど、やっぱり濡らしたのは良くなかったと思って、本は水から出ていて欲しくて本を持ってた右手だけ上に出そうとしたものだから、体は上にあがらない。沈みもしなくて、息だけできなくて。



 意識が遠のくので、脳みそに空気がいかないので、なんだか夢を見たんだと思う。

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