あすかは真夜中水底なり

私はついに死んだか。想像の世界だろうか? そうだろうな。



私は水面に直立していた。現実だったら浮力があるはず。人間は気を抜いていたら水中では上にあがるんだ。人間は水底で楽に直立は出来ないんじゃなかったか。けれど、私は今、意識せずに直立出来ていたのだった。



音は何も聞こえなかった。目の前には本が重ねられて置いてある。量があまりにも多いから森のようだ。本棚があればこの本たちの居場所が出来るのに、と一度思ったのだが、重ねられている本の森を抜けると本棚が沢山見えたのだった。



「君って馬鹿なんだな」



人間がいた。



「え?」



馬鹿と言う言葉に、私は「どういうこと?」と思った、あっけない疑問形の音が口から勝手に出ていた。



「君ってば、馬鹿なんだよ。頭より先に身体なんだね」



人間は男のようだった。でもなんだか分からないのだ。見えているのに見えなかった。



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