あなたがいてくれるから

秘密

☪︎


「─あげる」

「ありがとう……?」

席に座ってぼーっとしてると、急に突き出された紙パックのミルクティー。
少し前に、彼女がくれたのと同じヤツ。

よく分からないまま受け取ると、そのまま彼女改め彼─四条亜希は立ち上がり、凛空を手招き。

「え、もうすぐ授業始まるけど……」

そんな凛空の訴えも無視して、スタスタと教室の外に出ていく彼は出入口で振り返り、凛空を見てくる。

自分でも真面目になったとは思うが、彼女に『授業には出ようね』と言われちゃ、何となく毎日、昼休みには会うし、サボれなかった。

「行った方が早いよ」

悩んでいると、四条杜希がそう言った。

「亜希、本当にしつこいから。大丈夫。俺が先生には上手くいっておくし」

「……なんで」

「お昼、一緒してる仲間でしょ。任せて」

そう言って微笑まれちゃ、何も言い返せない。
誉もだが、この幼馴染達はどうも勢いがすごく、圧が強い。

観念して教室の出入口に向かうと、亜希に手を取られ、傍から見れば、昔のように女に手を引かれている光景だろうが……。

(男なんだよなあ……)

そんな風には全然見えないが、この手の力の強さは間違いなく、女に出せるものじゃない。

一体何の用事なのかは分からないが、大人しくついていくと、辿り着いたのは屋上入口前の踊り場。

彼はそこの壁に背中を預けて座り込むと、横を叩き、座るように凛空に言ってきた。

「……んで、何?」

意味がわからない行動に、とりあえず、貰ったミルクティーを飲む。

「煩わしいの、苦手」

「ん?」

「はっきり聞くね。─葵咲のこと、好き?」

「ブッ」

思わず、ミルクティーに噎せる。
咳き込んで、苦しくて、息が出来ない。

「ゲホゲホゲホッ」

「ごめん。まさか、そんなに動揺するなんて」

「や……っ、ケホ、何で?」

「え……葵咲を見る目が、優しい、から?」

サラリ、と、彼の髪が肩を流れる。

「最近、不純異性交友もしてないでしょ」

「……」

─過去を掘り返されて、とても気まずい。
誉と過ごすようになってから、何故か、日々は変に慌ただしく、なんとなくお腹いっぱいだから、女の子は全員、切った。

それが、1週間ほど前のこと。

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