あなたがいてくれるから

夜が明ける

✿*:


「─誉、お前、本当は賢いだろ」

勉強会を始めて、1ヶ月。
夕飯やお風呂を終えたあと、点呼の22時までお勉強の時間。

「え、褒めても何も出ないよ」

「馬鹿言え」

解いた問題集を丸つけしてくれる凛空は、

「……俺が教える理由は?」

と、訝しげに聞いてくる。

「え、だって、俺よりは絶対賢いじゃん。凛空」

「覚えてるだけだけど」

「それが難しいんだって。……まぁ、この時間を漕ぎつけた理由は、想像通り、別にあるけど」

疑うような眼差しが、誉を貫く。

(さーーーて!どうしようかな〜〜!!!!!)

普通に解いていただけだから、まさか、カマかけられていたなんて思わない。

(少し前のとある大学の、最難関と呼ばれた時の入試問題持ってくるとか、正気じゃねぇ〜!!!!!)

真面目な顔で淡々としているからこそ、面白い。

(解けて当たり前なんだよな〜!知り合いが通ってるし、面白がって、過去問解いたことあるし!─ああ、道理でどっかで見たことあると思った!)

平然を装いつつも、中身は大暴れ。
それどころじゃなくて、誉は適当に口にした、別の理由を考える。

何かあるだろうか。こいつが興味ありそうな…。

「─代わりにと言ってはなんだが、俺のことを教えてあげよう!」

(馬鹿か、俺は……)

心の中で突っ込みつつ、自分で自分に呆れる。
凛空は誉の勢いに瞬きを繰り返し、そして。

「……はぁ」

深めのため息をついた。
このテンションにも、いやでも慣れてきた頃だろう。

「─じゃあ、聞くわ」

馬鹿馬鹿しい質問コーナーとは思いつつ、意外と乗り気の彼に押される。

< 23 / 38 >

この作品をシェア

pagetop