あなたがいてくれるから



「名前は」

「花泉誉!」

「誕生日は?」

「4月15日!」

あまり興味無さそうに、それでいて、テンポよく質問を投げてくる男。

「あー……好きな物は」

「好きな物?んー……本?」

「え」

「……おい、お前、今、意外、と思っただろ」

「当たり前だろ。自分の行動、思い返せよ」

最近、こんな感じで軽く話せるようになってきた。
誉のテンションに、凛空が慣れてくれたおかげだ。

「こんなに真面目なのに!?」

「何処がだよ……寝言は寝て言え」

「酷!」

泣き真似をしてみると、後ろから蹴られる。

「俺の扱い、最近おかしくない?」

「お前の前で良い子ちゃんしても仕方ねぇし」

「……」

その通りだが、少し悲しい。

「─あ」

「え?」

次の質問を待っていると、何を思い出したのか、凛空は誉を見て。

「そういや、亜希が少し前に不思議なことを言ってたんだ。考えても分からないし、お前に聞く」

「えっ、何?俺にわかる?」

不思議ちゃんの亜希を思い出しながら、恐る恐る訊ねると、

「お前、氷室さんのことをどう思う?」

と、ド直球に聞かれた。

「氷室……ああ、葵咲?」

苗字なんて聞き慣れなさすぎて、誉は戸惑う。

「どう思うって……可愛いな、と」

「……お前、婚約者いるよな?」

「いるよ。知ってるだろ」

誉の最愛は、凛空もよく知っているはずだ。
最近、一緒に昼を過ごすようにもなったし……直接的な関係はないにしろ、顔は合わせているはず。

(そういえば、杜希が誤解がどうとか─……あれ?)

「─待て。何か、俺やらかしてる気がする」

「何がだ」

「や、えっと……大前提として、葵咲は俺にとっては人生で初めて愛した異性ではある。でも、それは恋愛的な意味じゃない」

「でも、幼なじみなんだろ」

「いや、亜希とかはそうだが。葵咲は物心つく前から一緒にいたというか……その、もしかしなくても、俺達が特別な仲だと思ってる? 」

恐る恐る誉が尋ねると、

「違うのか?」

と、本人は不思議そうな顔。

「いや、まぁ、特別といえば特別かもしれないけど……う〜ん」

どうしようか悩みつつ、本棚に置いてあるアルバムを取り、スマホでは少し前に撮ったとある写真を見せる。


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