あなたがいてくれるから

女子会?男子会?


☪ ‎



「……また、葵咲を怒らせたの?」


翌朝。部屋をノックされ、欠伸をしながら、誉が出た。すると、そこに立っていたのは亜希。

ワンピース姿に頭がおかしくなりそうだが、間違いなく男の、男子寮にいても問題ない亜希である。

「情報回んの、早くない?昨日の夜よ?」

何の話かはわからないが、誉はそう言って、スマホを取り出した。

「……」

「すごく、怒ってた」

「みたいっすねー……」

相変わらず、誉は朝だけテンションが低い。
変な話し方をして、ため息をつく誉に。

「だから、遊びに行こうよ」

「……文脈って知ってる?亜希ちゃん」

「知ってるよ?」

「そう……まぁ、いいや。で、どこ行くの」

大量の未読無視した怒りのメールと、不在着信。

折角、兄が取り計ってあげたんだから、感謝こそすれ、こんなに怒ることは無いのに。

「買い物」

「え?」

「買い物!女子会!」

「……俺、男ですけど」

「?、知ってるよ。私も男」

「ですよね?」

─俺がおかしいのだろうか、なんて、頭を抱えていると。

「朝から何事?コント??」

後ろから少し目を腫らした凛空が現れ、ワンピース姿の亜希を認め、

「何してるの?亜希」

と、純粋な疑問をぶつけた。

周囲からの要望で、葵咲以外は名前呼びで、取り繕うことを止めた凛空。
少し乱れたTシャツ姿で現れた凛空を見て、

「凛空も行く?」

「?、何に」

「女子会」

「……ここ、男子寮だけど」

「?、知ってるよ?」

凛空が助けを求める目を向けてくるが、申し訳ないことに、この不思議ちゃんは未だに理解が追いつかないくらい、自分の世界を生きている。

「あ、でも、凛空は連れて行っちゃダメなのかな」

「何だそれ。大体、女子会って……どうせいつものメンバーで行くんだろ。葵咲と祇綺とお前の3人で」

「うん。新作のデザート食べようと思って」

ニコッ、と、珍しく笑う。
恐らく、そのスイーツが大本命なのだろう。
甘いものに目がない亜希のことだから、今日の日程の半分以上は食い倒れになりそうである。

「婚約者と妹を連れて行っても、文句言わないよね。誉って」

「いや、まぁ……あいつらの交遊関係を壊す気は無いし、そもそも、あの二人と遊ぶのはお前だけだし、お前は幼なじみだし……?」

「違う人ならダメなの?」

「凛空なら別に」

亜希がそう言いながら、凛空を見たので、誉は否定しながら、首を振った。

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