あなたがいてくれるから
「……凛空、遊んでた割にはクソ真面目だね」
「…………や、うん、まぁ」
現実逃避なのか、しゃがみ込んだ凛空。
「─類は友を呼ぶのかな。葵咲もそんな感じだし」
「確か、杜希の刺青を見た感想、『痛くなかった!?』だったからね」
「そうそう。思わず、笑っちゃったよ。おもしれぇ〜!って」
「あ、杜希に葵咲はあげないよ」
「や、逆に遠慮する。別にタイプじゃないんで」
「最低すぎ」
「俺がくれって言っても、お前くれねぇくせに」
「あげませんけど!」
「どっちだよ」
そう言って笑う杜希は、いつも優しく微笑んで、人に囲まれて、自分を偽っているせいか、今はとても開放感を感じているのか、楽しそう。
「気が抜ける場所、増やしたかったんだよ。悪いな、凛空。あれだったら、俺とはもう関わらんでもいいし。お前も名家生まれだし、受け入れんでも……」
「や、そういう事じゃなくて」
「ん?」
「ますます、今度、彼女と出掛けるの、俺じゃなくて良くない?ってなってるだけ……」
……これまでの会話、何も聞いていなかったのか。真面目な顔をした凛空を見て、暫くの沈黙のあと、杜希は笑う。
「─良し。服買おうぜ、凛空」
「えっ、は!?」
「葵咲好みにする」
「なんで!?」
「友達の恋路は、全力で応援するタイプだから」
「な、ちょっ、誉、助け……」
「ハハッ、頑張れ〜」
凛空に助けを求める目で見られたので、誉は笑って、二人を送り出した。
─ピロンッ
そして、タイミング良く鳴る携帯。
追いかける前に確認すると、相手は亜希。
そして、顔真っ赤な葵咲のワンピース姿。
《どう???》
《めちゃくちゃ可愛い》
《ちょっと、凛空の好み聞いてよ》
《あ、それなら、あいつが無意識に見ていたやつ送るわ》
《シゴデキすぎ。え、ワンピースがいいかな?それとも、ズボン?男として、どっちがドキッとする?》
《お前も男だろうが……》
《今はアキちゃんモード♡だから……》
《どっちでも、祇綺が着てるものは全部好きなんだが……》
ここで、着物と答えるのは場違いだろうなぁと思いつつ、
《ワンピースで》
と、無難に返事しておく。
いつも、祇綺は着物かズボン。
だから、ワンピース姿も見てみたいという下心から返信すると、
《おk︎^_^》
と、返ってきた。
(……あいつは、どっかのギャルか?)
そう思いつつ、誉は彼らの元に向かうことにする。
凛空は多分、葵咲なら何でも喜ぶ。
チャラ男だったし、やっていたことを考えると、本当に最低野郎だったけど、葵咲と距離を強制的に縮めさせたら、なんか更生して、普通の好青年になり始めているし。
……なんて、これまでのことを考えれば、仕方ないことではあったけど。
1度作り上げた自分像で、心を守ろうとしていた凛空。それを勝手にぶち壊した誉を、凛空は責めることはなかった。
少しずつ、本当の凛空が顔を出した。
少しずつ、本当の凛空が笑顔を見せた。
本当はとても心優しくて、純粋で、父親の裏切りさえなければ……なんて。