この結婚はビジネスのはずでしたが、御曹司が本気で愛してきます
彼はほんの少しだけ視線を落としてから、答えた。

「……君は、俺と似ているから。」

その言葉は、胸の奥にすとんと落ちた。

似ている。

私もそう、どこかで感じていたのかもしれない。

強がりで、不器用で、人に頼れなくて、それでも必死に生きている――そんな自分を。

奏は私の手をそっと取り、花束を握る指の上に、優しく唇を落とした。

その感触に、胸がじんわり熱くなる。

これはただの契約。

そう思っていたはずなのに――

私は今、この人の手の温かさから、逃げられなくなりつつあった。

「……分かりました。」

私は、しっかりと頷いた。

奏はすぐに、私の手をぎゅっと握った。

その手の力強さに、なぜか胸がじんとした。

「よかった。引き受けてくれて。」
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