全部、俺のものになるまで

【1】午前0時の社長室

午後16時。会議が始まった。

社長・一瀬悠真を筆頭に、私たち企画部のメンバーが並ぶ。

このプロジェクトは、会社の命運をかけた大型企画。各部署が全力で取り組んでいる。

「もう少し、情熱的にできないか?」

静かな会議室に、一瀬さんの低く通る声が響く。

彼は、情熱で仕事を動かす男だ。

合理性だけでは人の心は動かない。

企画にも“熱”がなければ意味がない──そう常々言っている。

「この案はどうですか? 社長」

私は恐る恐る手を挙げ、提案書をスライドに映す。

彼は腕を組んだままじっと見つめ、それから小さく頷いた。

「うん、いいな。……ちゃんと、気持ちが乗ってる」

その一言に、胸が跳ねる。

けれどその視線が、ほんの一瞬だけ、他の誰でもない**“私”**に向けられていたことに気づいたのは、私だけだった。

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