全部、俺のものになるまで
「……おめでとうございます」

思わずこぼれた声は、乾いていた。

私は誰よりも、このプロジェクトに時間をかけたはずだったのに。

PCの画面が滲む。

でも、泣くわけにはいかない。

私はただ、黙ってデスクに戻った。

「今日、残業できるか?」

会議が終わったあと、社長・一瀬悠真がふいに声を上げた。

空気がぴり、と張りつめる。誰もが軽く反応するものの、次々と「予定がありまして」「すみません」と立ち上がっていく。

なんとなく、今日は気分が乗らなかった。

帰ってしまいたい。そう思っていたところで、名前を呼ばれた。

「高梨は?」

「私は今日……」

──そう言いかけた私の言葉を、彼の低い声が断ち切った。

「残業、できるな」

その瞳に抗えなかった。

熱を孕んだまなざしに、また心が絡め取られる。

「……はい」
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