幼なじみの心は読めない、はずだったのに!
「友妃ちゃん、ちょっと落ち着いっ」
「私ってさ、そんっなに女として魅力ないかな!? 女として終わってる!? なんっで彼氏できないの!? いや、私が避けてるのもあるけどさ!」
そりゃまあ俺が排除してるのもあるけどな。
「え、ああ……なんでだろうね? 友妃ちゃんはとっても魅力的だよ? 周りが見る目ないだけじゃないかな?」
なんて言う俺を酷く冷めた目で見ているのは宇野和と安曇。そんな目で見んな、やめろ。
「郁雄だって私のこと女として見れないでしょ~?」
酔っぱらいの戯れ言── いや、それさ、反則じゃね? 俺達ってただの幼なじみなんだよな? ただの幼なじみを“女”として見たらルール違反じゃねぇの? 幼なじみって関係性崩れるけどいいわけ?
俺は友妃のこといつだって女として見てるよ。でもさ、友紀からしたら俺達はただの幼なじみにすぎないんだろ? だったらさ、それは反則じゃね? 聞いてどうすんだよ、俺がなんて言えば友妃は満足するわけ?
どう答えたって、なんにも伝わんねぇだろ。
「沙雪、帰るぞ」
「え?」
「帰るぞ」
「ああ、うん」
「ええー! 帰っちゃうの!?」
「酔っぱらいの醜態晒して醒めた時、後悔すんのは平田だ。俺達がいないほうが平田のためだろ、じゃーな」
「友紀また明日ね! 細谷、友紀のこと頼むよ」
「うん、言われなくても」
宇野和達を引き止めようとする友紀を押さえ、そのまま部屋へ連行した。
「ぶぅー」
「そんなムッとしてもダメですよ~」
「……はぁーあ、もう無理かもぉ」
「ん~?」
「私一生恋人なんてできずに死んでいくんだ」
ハイテンションの次はネガティブモードか。
「なぁに言ってるの~」
「ねえ郁雄、私とキスできる?」
は? いや、なに言ってんの、この酔っぱらい。
「ええ、どうだろうね。僕達幼なじみでしょ?」
「私は郁雄とだったらキスくらいできるし~」
なんだそれ。俺とならキスできるってか? んなわけねぇだろ。なんなら俺とのキスがこの世で絶対できねぇことなんじゃねえの? んなこと自分が一番よく分かってんだろ。俺のこと男として見たことなんて一度だってねえくせに。友妃が俺とキス? 無理だろ、それはマジでない。友妃にそんな覚悟があるわけねえ。自分が何を言ってんのか分かってんの? 悪酔いしすぎだろ、タチ悪いわ。
「故意ではなかったにしろ飲みすぎちゃったね。もぉ友紀ちゃんも気をつけて飲食しなよ~? おっちょこちょいだなぁ。本当に困った人だ、友妃ちゃんは~。酔い醒ましに散歩でも行く?」
「逃げるの」
俺の瞳をジッと捉えて離さない友妃の瞳に全身が金縛りにあったみたいに硬直して動かなくなる。ただ呼吸をして、友妃から視線を逸らすことができない。
「……っ、はは……友妃ちゃんそれ、どういう意味?」
「私のこと気持ち悪いって思ってるでしょ、目が合わない変な女だって、そう思ってるんでしょ……私だって、私だってこんなふうになりたかったわけじゃない!」
やめろよ。
「もぉ友紀ちゃん、僕がそんなこと思うはずがないでしょ?」
「私が可哀想だから郁雄は情で一緒にいてくれてるだけだよね、ごめん」
やめてくれ。
「友妃ちゃん、いいかげんにしなよ。ちょっと度がすぎてる。ほら、酔い醒まし行くよ」
「だって郁雄はこんな気持ち悪い女とキスできないんでしょ!?」
やめろって。
「……ごめん、今日はもう戻るね」
このまま一緒にいたら俺は間違えなく友妃を壊す。友妃が嫌がろうが泣こうが喚こうが、俺は容赦なく壊す。そんな未来しか見えねえ。
「もういい」
うつ向いて、俺を見ようともしない友紀。
「なに?」
「誰だっていいや」
「……なに言ってるの」
「こんな目もろくに合わせられないような女でも相手にしてくれるんだったら誰だっていいやって話」
「は? なに、本気で誰でもいいわけ?」
「違う! でも恋人なんて絶対できないじゃん! このまま恋人もできず処女のまま死ねって言ってるの!? 誰にも愛されず、愛を知らないまま死ねって!?」
んだよ、どうしたいわけ? なにを求めてんの? この俺に。ただの幼なじみな俺に友妃は何をしてほしいんだよ。なにが正解なんだ、どうすりゃいいわけ? もうわっかんねぇんだけど。
「友妃ちゃん、お酒のせいで冷静な判断できなくなってるよ。全く正常ではないし、これ後で記憶にないパターンのやつ」
「別に正常だし冷静だもん!」
ああ、そうかよ。キスすりゃあいいのか? 俺の欲ぶつけていいわけ? 俺にされていいのかよ、俺で後悔しねぇのかよ。知らねえぞ、後で後悔してもキスされた事実は消えねえ。一生残るぞ、その感覚は。
「友妃ちゃん」
「なによ」
「後悔しないわけ?」
「なにが」
「なにって……決まってるよね? 僕とキスするの」
「ははっ、後悔なんてしないでしょ~。だって自分から言い出したんだし~」
「あのさ、真面目に聞いてるんだけど。茶化すのやめて。じゃないと僕、本気で友妃ちゃんのこと壊すけど……いいの? それで」
ま、こんな状態で正常なわけがないわな。酔っぱらい特有のフラつき、とろんとした目に潤んだ瞳。こんなもん正常な判断がつくわけねえ。つーか寝て起きたら忘れてんだろ、こんなやり取り。つけ込んでいいのか、本当に。
「郁雄なら……どんな私でも受け入れてくれるかもって……だから後悔なんてしない」
酔っぱらいの戯れ言にすぎん、そう頭では分かってるしちゃんと理解もできてる。だが、俺の心がもう言うこと聞きそうにねえ。
「ふーん。ならする? 僕と」
「え?」
「キス、僕する? まぁ僕は友妃ちゃんとそれ以上のこともしたいけどね」
「……す、する……郁雄とキスしたい……」
友妃のその一言で、今まで我慢して塞き止めてたもんが一気に音を立てて崩れていく。
溢れ出す想いはもう、止められない。
「知らないよ、どうなっても」
「うん」
ずっと触れたかった、奪いたかった友妃の唇はとても柔らかくて食らい尽くしたくなる。友紀が可愛すぎて俺の理性が持ちそうにねえ。
「……ん、郁雄……」
「ふっ、なにそれ可愛すぎ」
友紀が逃げないようしっかり捕まえて離さない。俺がどれだけ我慢してたか解らせてやるって息巻いてたものの、友紀がそんな俺に合わせようとしてくれてんのが愛おしくすぎて気が狂いそうになる。
「もうっ……」
「友紀?」
ぐたっと力が抜けて俺に倒れ込んできた友紀は、気絶していた。
「友妃、愛してる」
「私ってさ、そんっなに女として魅力ないかな!? 女として終わってる!? なんっで彼氏できないの!? いや、私が避けてるのもあるけどさ!」
そりゃまあ俺が排除してるのもあるけどな。
「え、ああ……なんでだろうね? 友妃ちゃんはとっても魅力的だよ? 周りが見る目ないだけじゃないかな?」
なんて言う俺を酷く冷めた目で見ているのは宇野和と安曇。そんな目で見んな、やめろ。
「郁雄だって私のこと女として見れないでしょ~?」
酔っぱらいの戯れ言── いや、それさ、反則じゃね? 俺達ってただの幼なじみなんだよな? ただの幼なじみを“女”として見たらルール違反じゃねぇの? 幼なじみって関係性崩れるけどいいわけ?
俺は友妃のこといつだって女として見てるよ。でもさ、友紀からしたら俺達はただの幼なじみにすぎないんだろ? だったらさ、それは反則じゃね? 聞いてどうすんだよ、俺がなんて言えば友妃は満足するわけ?
どう答えたって、なんにも伝わんねぇだろ。
「沙雪、帰るぞ」
「え?」
「帰るぞ」
「ああ、うん」
「ええー! 帰っちゃうの!?」
「酔っぱらいの醜態晒して醒めた時、後悔すんのは平田だ。俺達がいないほうが平田のためだろ、じゃーな」
「友紀また明日ね! 細谷、友紀のこと頼むよ」
「うん、言われなくても」
宇野和達を引き止めようとする友紀を押さえ、そのまま部屋へ連行した。
「ぶぅー」
「そんなムッとしてもダメですよ~」
「……はぁーあ、もう無理かもぉ」
「ん~?」
「私一生恋人なんてできずに死んでいくんだ」
ハイテンションの次はネガティブモードか。
「なぁに言ってるの~」
「ねえ郁雄、私とキスできる?」
は? いや、なに言ってんの、この酔っぱらい。
「ええ、どうだろうね。僕達幼なじみでしょ?」
「私は郁雄とだったらキスくらいできるし~」
なんだそれ。俺とならキスできるってか? んなわけねぇだろ。なんなら俺とのキスがこの世で絶対できねぇことなんじゃねえの? んなこと自分が一番よく分かってんだろ。俺のこと男として見たことなんて一度だってねえくせに。友妃が俺とキス? 無理だろ、それはマジでない。友妃にそんな覚悟があるわけねえ。自分が何を言ってんのか分かってんの? 悪酔いしすぎだろ、タチ悪いわ。
「故意ではなかったにしろ飲みすぎちゃったね。もぉ友紀ちゃんも気をつけて飲食しなよ~? おっちょこちょいだなぁ。本当に困った人だ、友妃ちゃんは~。酔い醒ましに散歩でも行く?」
「逃げるの」
俺の瞳をジッと捉えて離さない友妃の瞳に全身が金縛りにあったみたいに硬直して動かなくなる。ただ呼吸をして、友妃から視線を逸らすことができない。
「……っ、はは……友妃ちゃんそれ、どういう意味?」
「私のこと気持ち悪いって思ってるでしょ、目が合わない変な女だって、そう思ってるんでしょ……私だって、私だってこんなふうになりたかったわけじゃない!」
やめろよ。
「もぉ友紀ちゃん、僕がそんなこと思うはずがないでしょ?」
「私が可哀想だから郁雄は情で一緒にいてくれてるだけだよね、ごめん」
やめてくれ。
「友妃ちゃん、いいかげんにしなよ。ちょっと度がすぎてる。ほら、酔い醒まし行くよ」
「だって郁雄はこんな気持ち悪い女とキスできないんでしょ!?」
やめろって。
「……ごめん、今日はもう戻るね」
このまま一緒にいたら俺は間違えなく友妃を壊す。友妃が嫌がろうが泣こうが喚こうが、俺は容赦なく壊す。そんな未来しか見えねえ。
「もういい」
うつ向いて、俺を見ようともしない友紀。
「なに?」
「誰だっていいや」
「……なに言ってるの」
「こんな目もろくに合わせられないような女でも相手にしてくれるんだったら誰だっていいやって話」
「は? なに、本気で誰でもいいわけ?」
「違う! でも恋人なんて絶対できないじゃん! このまま恋人もできず処女のまま死ねって言ってるの!? 誰にも愛されず、愛を知らないまま死ねって!?」
んだよ、どうしたいわけ? なにを求めてんの? この俺に。ただの幼なじみな俺に友妃は何をしてほしいんだよ。なにが正解なんだ、どうすりゃいいわけ? もうわっかんねぇんだけど。
「友妃ちゃん、お酒のせいで冷静な判断できなくなってるよ。全く正常ではないし、これ後で記憶にないパターンのやつ」
「別に正常だし冷静だもん!」
ああ、そうかよ。キスすりゃあいいのか? 俺の欲ぶつけていいわけ? 俺にされていいのかよ、俺で後悔しねぇのかよ。知らねえぞ、後で後悔してもキスされた事実は消えねえ。一生残るぞ、その感覚は。
「友妃ちゃん」
「なによ」
「後悔しないわけ?」
「なにが」
「なにって……決まってるよね? 僕とキスするの」
「ははっ、後悔なんてしないでしょ~。だって自分から言い出したんだし~」
「あのさ、真面目に聞いてるんだけど。茶化すのやめて。じゃないと僕、本気で友妃ちゃんのこと壊すけど……いいの? それで」
ま、こんな状態で正常なわけがないわな。酔っぱらい特有のフラつき、とろんとした目に潤んだ瞳。こんなもん正常な判断がつくわけねえ。つーか寝て起きたら忘れてんだろ、こんなやり取り。つけ込んでいいのか、本当に。
「郁雄なら……どんな私でも受け入れてくれるかもって……だから後悔なんてしない」
酔っぱらいの戯れ言にすぎん、そう頭では分かってるしちゃんと理解もできてる。だが、俺の心がもう言うこと聞きそうにねえ。
「ふーん。ならする? 僕と」
「え?」
「キス、僕する? まぁ僕は友妃ちゃんとそれ以上のこともしたいけどね」
「……す、する……郁雄とキスしたい……」
友妃のその一言で、今まで我慢して塞き止めてたもんが一気に音を立てて崩れていく。
溢れ出す想いはもう、止められない。
「知らないよ、どうなっても」
「うん」
ずっと触れたかった、奪いたかった友妃の唇はとても柔らかくて食らい尽くしたくなる。友紀が可愛すぎて俺の理性が持ちそうにねえ。
「……ん、郁雄……」
「ふっ、なにそれ可愛すぎ」
友紀が逃げないようしっかり捕まえて離さない。俺がどれだけ我慢してたか解らせてやるって息巻いてたものの、友紀がそんな俺に合わせようとしてくれてんのが愛おしくすぎて気が狂いそうになる。
「もうっ……」
「友紀?」
ぐたっと力が抜けて俺に倒れ込んできた友紀は、気絶していた。
「友妃、愛してる」