かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
母があれでもかこれでもかと持ってくる見合いの相手は、いずれもいわゆる良家の令嬢だ。
仮にそんなお嬢様の一人と縁談がまとまって結婚したとして。

ニューヨークへ渡ったら、自分は久我ホールディングスのアメリカ法人の仕事と並行して、大学院のビジネススクールでMBAを取得するという二足の草鞋(わらじ)を履く生活になる。
起業にはネットワーキングも重要であるから、現地での人脈作りにも励まなくてはいけない。
間違いなく殺人的なスケジュールになり、家には寝に帰るだけだろう。

自分にその覚悟は十分にあるが、相手はどうだ?

なに不自由なく育てられた若い女性が、異国の地でいわば “放置” されるのだ。
三日で逃げられる自信があった。そして相手のやんごとなき実家との関係はこじれることになるだろう。

もともと櫂のように女性をロマンチックな気分にさせられるようなタイプでもない。愛想一つ言えないぶっきらぼうな性格だ。

冷たい夫との孤独な生活を受け入れてくれる…そんなムシのいい話、と苦笑したところでふと、うちの社員ならばどうだろうと思いついた。

地位利用するようで気が(とが)めるが、一つの契約として遂行してもらうのだ。
極端な話、ニューヨークでの生活が軌道に乗るまででかまわない。
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