かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
透さんにいわせると「頭はいいが、自分でそれを持て余しているモラトリアム・キッズ」だそうだ。

だそうだ、というのはわたしはまだ会ったこともないからだ。
「レポートに追われてる」といって結婚式にも出席しなかったのだ。
至さんと透さんは「おおかたガールフレンドと旅行の約束でもあったんだろう」「それか別れ話で揉めてるか」と平然としていた。

義母には「失礼な子でごめんなさいね」と謝られたけれど、会ってもいない義弟なのでどうもこうも、という感じだった。

歳の離れた末っ子には両親も甘いのだと、つまらなそうに透さんは言う。

久我家の三兄弟はそれぞれ、質実剛健な長男、独立不羈な次男、自由奔放な三男とカラーが異なるようだ。

「櫂に桜帆のメッセージアプリのIDを教えてもいいかな?」

「それはかまわないけど…」
意図をはかりかねて語尾がすぼまる。

「あいつはイギリスが長いから、こっちには知ってる人もあまりいないみたいで。俺は忙しいし」

なんだかんだ透さんも弟のことを気にかけているようだ。

「わたしでできることがあれば」
向こうは本場イギリス仕込みの英語話者だ。街案内くらいは務まるだろうか。

もし連絡が来たら相手をしてやってほしい、と透さんは話をしめくくった。
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