かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
寡黙に試合は始まった。
透さんから打ち込み、櫂さんが返す。これはネットに引っかかる。
わたしはコートの横に立って得点ボードをめくった。

さらに透さんからサーブ。今度はネットを越えて返ってくる。ラリー。おっと、透さんが打ち損ねる。

周りはダブルスにしろシングルにしろ、和気藹々(わきあいあい)と週末のひとときを楽しんでいる人たちばかりだ。
笑い声と掛け声が絶えない。

その中にあってわたしたちは、ちょっと浮いているに違いない。
真っ向勝負を挑んでいる透さんは、全身にいつも以上の鋭気をみなぎらせ、呼応するように櫂さんの表情も真剣そのものだ。

第一セットは透さんが気迫で取った。といってもこのセットはノーカウントだ。
二人ともみるみる勘をつかみ、打つごとに動きが良くなっていくのに驚く。運動神経までいいのだ。

審判というより、わたしは得点係だった。

第二セットが始まる。ここからが本番だ。
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