かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
穏やかな週末の日差しがリビングに満ちている。

「桜帆のうまい食事には心身ともに助けられたし、誰かと暮らすってやっぱりいいもんだなと思えた。…ってこんな話をする時間すらほとんどとれなくて申し訳なかった」

「だって透さんがどんなに忙しいのか、それこそ一緒に暮らしてるから分かったもの。仕事と学業の両立だけでも超人的なのに、このうえ家族サービスまでやってたら倒れちゃうなって」

「ようやく仕事の目処がついてきたんだ」
透さんは静かに語った。
いくら実家は関係ない、自分の力で切り拓くと息巻いたところで、今の自分があるのは親や周囲のおかげであることを忘れてはいけない。
久我ホールディングスにいたことで得た人脈もある。
だから独立前の恩返しとして、アメリカ法人で新事業を軌道に乗せるためにメンバーと奮闘していた。

そのかいあって仕事はひと段落したので、会社からは徐々に手を引いて学業に主軸を移すという。

「桜帆と過ごす時間も、もっととれるようになるから」

「嬉しい…けど無理はしないでね」

この人と結婚してよかったと、ニューヨークで実感している。結婚したときはこんなふうに思える日が来るなんて、想像できなかったけれど。
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