かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
ちなみに櫂さんは、トモミ先生のレッスン動画を有料で配信することを考えついた。
ノーマンは職業柄、妻のヨガやピラティスの様子を何本も映像に収めていたので、そこに音声ガイドや字幕をつけて編集すればよかった。
ささやかでも収入の足しになるだろう。

「みんなが毎日気にかけてくれて、代わりに用事を引き受けてくれるんだもの。女王様みたいな気分だわ。たまに骨を折るのも悪くないわね」
そんな軽口まで出てくるようになっていた。

ノーマンは泊まりがけの仕事はキャンセルするなど、多少セーブはしているけれど、みんなの手厚いサポートのおかげで仕事を続け、妻も自分も不自由なく生活が送れている、とたびたび感謝のメッセージを発信していた。

透さんは最近は、週に二回は自宅で夕食を食べられるようになったので、もちろん何かと相談に乗ってもらっていた。
常に二、三手先を読み発想力もある透さんの意見にはいつも助けられる。

「電動歯ブラシとかマウスウォッシュを提案してみたらどうだろう。利き手じゃないと歯磨きも大変だろう。アメリカは歯科診療も高額だ」
「痛みを感じずに暮らせるだけでありがたいんだと、俺も気づいた。桜帆も感じてるだろうし、そういう気づきは本人に積極的に伝えるべきだ。自分の体験が無駄じゃないと知ることは精神的な救済になる」
といったふうに。頼りになる夫なのだ。
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