推しに告白(嘘)されまして。
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バレンタインまであと1週間。
数量限定の超高級チョコレートの予約をネットで勝ち取った私はスマホに表示された、発送予定日を見た。
どうやらあの幻の100個限定チョコレートはバレンタイン前日には届くようだ。
昼休み。
暖房のよく効いたスポーツ科の教室で、私は机を挟んで向こう側にいる悠里くんと共にお昼ご飯を食べていた。
「バレンタインは柚子の手作りがいいな」
「…っ、ぐぅっ!」
たまたまスマホに視線を落としていた私に、悠里くんがポツリと呟く。
あまりにもタイムリーな話題に、私は一瞬口に含んでいたご飯を吐き出しそうになった。
…もちろん、吐くわけにはいかないので、一生懸命耐えたが。
「んんっ、な、何、言ってるの…?む、無理だよ、無理」
ごくん、と何とかご飯を飲み込み、慌てて、私は首を横に振る。
そんな私を見て、悠里くんは悲しげに眉を下げた。
…ぐ、胸が痛いがこれはどうしても譲れない。
「…悠里くんも知ってるよね?私が壊滅的に料理ができないってことを。悠里くんの命が危ないんだよ?だから手作りは絶対できないよ」
「…」
「そ、そんな目で見ても、む、無理ですから。もう幻のチョコも用意済みだし…」
「…」
「わ、私のチョコで何度お父さんが天に召されてきたか…」