推しに告白(嘘)されまして。
「いや、だから、私の彼氏は…」
「正直、お前の振る舞いは目に余るものがあるぞ。生徒たちの意見にも頷ける。この前のバレンタインの時も見たが、公衆の面前で2人をはべらせていたじゃないか」
「は、はべらせっ…!?」
悠里くんこそが私の正式な彼氏である、と田中に伝えたかったのだが、田中の怒涛の責めに、私は言葉を詰まらせる。
田中には私が一体どう見えているんだ!
「…はべらせてなんかないよ。私の本命は悠里くんだし、彼氏だってもちろん悠里くんだよ」
冷静を装い、眉間に寄ったシワを意識して緩めながらも、田中の言葉を否定する。
しかし、田中は人差し指で眼鏡をクイッと上げ、その奥で、ギロリと私を睨んだ。
「なら、そのような振る舞いをしろ。だいたい風紀を守る風紀委員のトップであるお前が一番に風紀を乱してどうする?それでも鬼の風紀委員長なのか?」
「いや、私はそんなつもりはなくて、周りが勝手に…」
「周りが勝手に?それはお前の振る舞いが招いた結果だろう?甘えたことを言うな」
「いやいや、私はちゃんと悠里くん一筋で…」
「そうは見えないがな。華守に対して距離が近すぎるのでは?パーソナルスペースは大事だろう?頬を赤らめているところも前に見かけたな。それも華守相手に」
「…」
田中の言葉を否定しようとすればするほど、田中から正論を叩きつけられて、ついには何も言えなくなってしまう。
そんな私に田中は「そもそもお前は…」と、説教を続けた。
「て、鉄崎さんが説教されてる…」
あまり見ない異様な光景に、1人の風紀委員が物珍しげに呟く。
「鉄崎先輩が誰かに説教してるところはよく見ますけど、されているところは初めて見ました…」
「さ、さすが、会長だわ…」
それから他の風紀委員たちも遠巻きにこちらを見て、小さな声でざわざわと騒ぎ始めた。
私はその中でため息を漏らした。
「ため息を吐きたいのはこちらだが?」
そんな私を田中が見逃すはずもなく。
新たに燃料を注がれた田中は、ますます強い口調で私を責め立て始めたのであった。