推しに告白(嘘)されまして。
「あ、悠里くん。おはよう」
声の方へと振り向けば、そこには練習着姿の悠里くんがいた。
どうやら朝練前のようだ。
私と目の合った悠里くんはぎょっと目を見開いた。
ん?何故?
「ゆ、柚子…っ!?どうしたの、それ!?」
首を傾げる私に、慌てて悠里くんが駆け寄ってくる。
そしてそのまま悠里くんは、手に持っていたタオルを私の頭にかけ、わしゃわしゃと髪を拭き始めた。
あー。私がびしょ濡れだったから悠里くんはあんな顔をしたのか。
…じゃなくて!
「や、やめて!悠里くん!悠里くんの貴重なタオルが私のせいで使い物にならなくなっちゃう!」
柔らかくいい匂いに包まれながらも、私は必死で抵抗する。
悠里くんのタオルは悠里くんの尊い汗を拭くものであって、決して私を拭くものではない!
断じて違う!
首を一生懸命横に振り、悠里くんの腕に手を伸ばすが、それでも悠里くんはその手を止めなかった。
「やめないよ。このままだと柚子風邪引いちゃうじゃん」
タオルで両頬を包まれて、悠里くんが真剣な表情で私の瞳を覗く。
そのあまりにもまっすぐな視線に、私の心臓はトクンッと小さく跳ねた。
何と反則な視線なのだろうか。
こんな視線、抵抗できるわけがない。