推しに告白(嘘)されまして。
「…やっぱ、いいね」
話の途中で突然、悠里くんが嬉しそうに瞳を細め、こちらをじっと見つめる。
「何が?」
私はその視線の意味がわからず、悠里くんに笑顔で問いかけた。
よくわからないが、悠里くんが嬉しいのなら、私も嬉しい。
「柚子、俺の体操服、着てくれてるじゃん。だから、柚子がちゃんと俺の彼女だって感じがしていいな、て」
ふわりと微笑む悠里くんの笑顔があまりにも眩しく、紡がれたことがあまりにも甘く、どくん、と心臓が跳ねる。
は、反則級のかっこよさ。
我が校のバスケ部の王子様の枠に収めてしまうのは、もったいない。
宇宙の王子様にすべきだ。
尊すぎる存在にたじたじになっていると、悠里くんはそんな私なんてお構いなしに、私の左手を優しく取り、薬指を撫でた。
「校則さえなかったら、ここに毎日柚子は俺があげた指輪付けてくれるのかな」
残念そうに、けれど、どこか物欲しげに、悠里くんが視線を伏せる。
長いまつ毛が整った顔に影を作る様はあまりにも甘く、色っぽかった。
そんな悠里くんの姿に、私の心臓は今にも破裂しそうだった。
バクバクと聞いたことのない音が嫌というほど聞こえてくる。
思考が停止して、頭の中は悠里くんでいっぱいだ。
まさに今、悠里くんによって意識が沈みそうになった、その時。
失いかけた私の意識を戻すように、予鈴が鳴った。
「…あ、もうさすがに行かないとだね。それじゃあまた後で、柚子」
離れ難そうに悠里くんが私の左手を離し、私から離れていく。
私はそんな悠里くんに「…う、うん、また」と、何とか返事を返すと、離れていく悠里くんの背中を悠里くんが教室へと入るその瞬間まで見届けた。
教室へ入る際、悠里くんが再びこちらに視線を向けたことによって、再び目が合い、私の喜びが頂点に達したことは言うまでもない。
私と目の合った悠里くんは、それはそれはもう愛おしげに口元を緩め、こちらに軽く手を振ってくれた。
…私の推し、眩しくて、尊くて、かっこよくて、優しくて、メロくて、とにかく推すしかない要素がありすぎて困る。