推しに告白(嘘)されまして。



…ほら、やっぱり。

いつも通りに見えていた悠里くんのわずかな変化に気づき、ズキッと胸に鈍い痛みが走る。
私は悠里くんを傷つけたくなかった。
ずっと笑っていて欲しかった。
私が全部悪いのだ。

改めてもう一度、別れを切り出そうと、口を開く。
…が、私の口から別れの言葉が出るよりも早く、悠里くんが言葉を紡いでいた。
とても苦しげに微笑みながら。



「これからも俺は傷つくかもしれない。苦しいかもしれない。けど、それでも一緒にいたいんだ」



今にも壊れそうな脆さがそこにはあって。
夕日に溶けて消えてしまいそうな悠里くんに、胸騒ぎがした。
今、目の前にいる悠里くんはもう普段の悠里くんではない。
そう直感的に感じた。



「ごめん、柚子。俺、柚子のこと離してあげられない」



悠里くんが暗い瞳を柔らかく細めて、ふわりと笑う。
笑っているのに、泣いているようなその表情に、私はどうしたらいいのかわからなくなった。
ただここで、こんなにも苦しげな悠里くんを突き放すことなんて、私にはできなかった。



< 395 / 445 >

この作品をシェア

pagetop