推しに告白(嘘)されまして。
「柚子!」
柔らかく、そしてとんでもないイケボ。
これは間違いなく私の推し、悠里くんの声だ。
昨日あんな形で別れたばかりなのに、まさか悠里くんから声をかけられるとは夢にも思わず、私は大きく肩を揺らした。
自然と高鳴ってしまう胸を律して、いつも通りの表情を作る。
それから悠里くんの方へと視線を向けた。
「お、おはよう、悠里くん」
「おはよう、柚子」
何とか笑顔で挨拶をした私に、悠里くんが変わらず柔らかく微笑む。
確かに昨日、別れたはずなのに、やはり悠里くんはいつも通りだ。
それどころかどこか晴れ晴れとしており、瞳から暗さがなくなったからなのか、穏やかにも見える。
悠里くんは私をしばらくじっと見て、申し訳なさそうにその形のよい眉を下げた。
一体、何が悠里くんをそんな表情にさせているのだろうか。
「…目、少し赤いね」
悠里くんが壊れものを扱うかのように優しく私の目尻に触れる。