一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
これは、まずい。今から仕事なのにいちゃいちゃしていたら時間も体力もなくなる。それでも突っぱねる気概がなく、理性と欲望との葛藤の間で気持ちが揺れ動く。
「い、一緒は無理だからね。仕事あるから」
「何もしない」
「……」
「本当だよ。俺の全財産かけていい」
ジト目で見つめたら、さらっとすごいことを言う。全財産っていくらあるの?っていうかこんなことで全財産賭けないでほしい。
小言を言おうと口が開く前に彼がそっと私の耳に唇を寄せた。
「楽しみは夜にとっておくことにしたから」
そう囁いた後、耳介をそっと食んだ。敏感なそこに触れられて、私は飛び上がると同時に耳を押さえる。
「もうっ」
睨んでもまったく怯む様子もない。むしろ上機嫌な彼は優しく眦を落とす。
「ごめんごめん。繁忙期だと疲れるだろうし、つぐみの仕事が一段落するまで待つよ」
「え……」
「残念そうだな?」
「ち、ちが……わなくもない」
別に身体を重ねたくないわけじゃない。今は仕事に行かなくちゃいけないからで……。
もごもご口を動かすわたしに鷹士さんは大きな手のひらで私の頭を撫で、その流れで輪郭を隠していた髪を耳にかける。指が耳をなぞると先程触れた彼の唇を思い出して、耳から全身へと熱が広がっていった。
「なぁ、今日俺の誕生日だけど、つぐみの誕生日も祝えなかった分何かしたい」
「え、私の誕生日って、三ヶ月後だよ?」
「それはそれで盛大に祝う。でも、今年は祝えなかったから……好きなもの買えって言っても自分の金で買うし。俺はどうすればいいのか途方にくれた。いらないものを贈っても嫌がられるかもしれないし、そう考えているうちに欲しいものを訊くタイミングも逃して……」
「あ、そうだったの?」
そういえば、そんなメッセージが送られてきたなと思い出す。そうか、あれは彼が私にプレゼントを贈りたいという意図があったのか。
そういえば、パーティーの帰りに好きなものを訊いてきた時も少し緊張気味だった。彼なりに私のことを気にかけていたけれど、適切な距離を測っていたのだ。あまりに仲良くなっても、別れが来るのがわかっていたから。
謎が解けてはぁと口を開いたら、彼が少し前屈みになる。すぐ前にアクアマリンみたいな瞳の中に私を映す。
「だから、ちゃんと祝いたい」
鷹士さんはそっと私に額を合わせた。さっき見た青色が視界いっぱいになる。なんて美しいんだろう。目を閉じるのも勿体ないくらい魅入られていく。
「生まれてきてくれてありがとう。つぐみ」
「私こそ……鷹士さんが生まれてきてくれて幸せです」
少しのズレがあったら、出会えなかったかもしれない奇跡。それを確認するようにお互い抱きしめ合った。彼の温もりに包まれてじんわりと胸の奥からあたたかくなってくる。思わず、ため息が漏れた。
「あー幸せ」
「なら、もっと幸せにする」
そう言った彼は私の顎に指をかけ上に向けた。唇が降ってくる。まるで、誓いのキスをするかのようにそっと、優しく。
「際限なく愛すから覚悟をしておくように」
澄んだ青に熱い熱が滲む。同時に白い頬も鮮やかな桃色に染まっていて、かっこいいのに、可愛い私の旦那様。
思わず、にんまりと口の両端を上がる。
「望むところよ!」
彼の首の後ろに手を回して抱きついた。彼は少し驚きながらも私を抱きとめる。私の足は床から離れて宙に揺れる。でも、彼の腕がしっかり私の腰を抱き締めて揺るがない。
「そっちこそ覚悟してね」
耳にそう囁やけば、雲間から優しく差し込んでくる陽光の中で、「負けられないな」と彼は朗らかに笑った。
*END*
最後までご閲覧ありがとうございました。
「い、一緒は無理だからね。仕事あるから」
「何もしない」
「……」
「本当だよ。俺の全財産かけていい」
ジト目で見つめたら、さらっとすごいことを言う。全財産っていくらあるの?っていうかこんなことで全財産賭けないでほしい。
小言を言おうと口が開く前に彼がそっと私の耳に唇を寄せた。
「楽しみは夜にとっておくことにしたから」
そう囁いた後、耳介をそっと食んだ。敏感なそこに触れられて、私は飛び上がると同時に耳を押さえる。
「もうっ」
睨んでもまったく怯む様子もない。むしろ上機嫌な彼は優しく眦を落とす。
「ごめんごめん。繁忙期だと疲れるだろうし、つぐみの仕事が一段落するまで待つよ」
「え……」
「残念そうだな?」
「ち、ちが……わなくもない」
別に身体を重ねたくないわけじゃない。今は仕事に行かなくちゃいけないからで……。
もごもご口を動かすわたしに鷹士さんは大きな手のひらで私の頭を撫で、その流れで輪郭を隠していた髪を耳にかける。指が耳をなぞると先程触れた彼の唇を思い出して、耳から全身へと熱が広がっていった。
「なぁ、今日俺の誕生日だけど、つぐみの誕生日も祝えなかった分何かしたい」
「え、私の誕生日って、三ヶ月後だよ?」
「それはそれで盛大に祝う。でも、今年は祝えなかったから……好きなもの買えって言っても自分の金で買うし。俺はどうすればいいのか途方にくれた。いらないものを贈っても嫌がられるかもしれないし、そう考えているうちに欲しいものを訊くタイミングも逃して……」
「あ、そうだったの?」
そういえば、そんなメッセージが送られてきたなと思い出す。そうか、あれは彼が私にプレゼントを贈りたいという意図があったのか。
そういえば、パーティーの帰りに好きなものを訊いてきた時も少し緊張気味だった。彼なりに私のことを気にかけていたけれど、適切な距離を測っていたのだ。あまりに仲良くなっても、別れが来るのがわかっていたから。
謎が解けてはぁと口を開いたら、彼が少し前屈みになる。すぐ前にアクアマリンみたいな瞳の中に私を映す。
「だから、ちゃんと祝いたい」
鷹士さんはそっと私に額を合わせた。さっき見た青色が視界いっぱいになる。なんて美しいんだろう。目を閉じるのも勿体ないくらい魅入られていく。
「生まれてきてくれてありがとう。つぐみ」
「私こそ……鷹士さんが生まれてきてくれて幸せです」
少しのズレがあったら、出会えなかったかもしれない奇跡。それを確認するようにお互い抱きしめ合った。彼の温もりに包まれてじんわりと胸の奥からあたたかくなってくる。思わず、ため息が漏れた。
「あー幸せ」
「なら、もっと幸せにする」
そう言った彼は私の顎に指をかけ上に向けた。唇が降ってくる。まるで、誓いのキスをするかのようにそっと、優しく。
「際限なく愛すから覚悟をしておくように」
澄んだ青に熱い熱が滲む。同時に白い頬も鮮やかな桃色に染まっていて、かっこいいのに、可愛い私の旦那様。
思わず、にんまりと口の両端を上がる。
「望むところよ!」
彼の首の後ろに手を回して抱きついた。彼は少し驚きながらも私を抱きとめる。私の足は床から離れて宙に揺れる。でも、彼の腕がしっかり私の腰を抱き締めて揺るがない。
「そっちこそ覚悟してね」
耳にそう囁やけば、雲間から優しく差し込んでくる陽光の中で、「負けられないな」と彼は朗らかに笑った。
*END*
最後までご閲覧ありがとうございました。


