片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
 彼はこちらに向かって凄みながら忠告をして満足したのだろう。
 この場から何事もなかったかのように立ち去った。

『被疑者の前で冷静でいられぬ夫など、娘にはふさわしくねぇ。今すぐ、離婚してくれないか?』

 そんなふうにお伺いを立てて来なくてほっとする反面、僕が警察官として働いているのはイメージではないと口にした愛奈の言葉を反芻する。
 警察組織は世間一般からしてみれば正義の味方のような組織なのかもしれないが、その内情は天国よりも地獄に近い。
 一般常識に則した正しい行いをしているはずなのに、権力者がそれを悪だと語れば、非難轟々を浴びる。

 ――毎日のように不条理と戦い、涼しい顔をして飄々と立ち回るなど僕には無理だ。
 再び愛する妻が危険に晒されるような事件が起きたら、冷静でなどいられない。
 このまま警察官を続けていて、愛奈を守り続けられるのだろうか?
 警視総監の忠告を受けて悩んだ結果、すぐさま答えに辿り着けず――僕はしばらくその場から、動けなかった。
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