ウェルカム・トゥ・トリックスター
さっと通り過ぎて帰るつもりだった、帰りたかったのに。

だけど目が合っちゃった、鋭い視線と。

「え…?」

突き刺さる視線が、胸をつく。

「何言ってるんですか?あの手紙ってっ」

「差出人のない手紙、あれは自作自演だろ?」

「!」

壁から背中を離してあたしの前に立つ。上からこの瞳に見られるのはすごく圧を感じた。

「何の…話ですか?そんなわけじゃないじゃないですか、なんであたしがそんなこと…っ」

「最後まで嘘通すならもっと上手くやれよ、そんな目が泳いでたら自分がやりましたって言ってるもんだろ」

「違…っ!違います!」

何を言ってるの?何を言われてるの?

「てゆーかもう手紙は入ってないんで!もう帰ります、早く帰りたいんでっ」

三日月先輩の瞳から逃れたくて今度こそ通り過ぎる、強引に視線を背けて捕まらないように。

一歩踏み出してここからー…


「じゃあどうして手紙を見付けた時は驚かなかった?」


なのに、やっぱり足が動かなくて。

「メッセージカード付きのクッキーを見た時はひどく驚いた表情をしていた、それは恐怖で声も出なかったんだろ」

「……。」

「だけど手紙を見た時は表情1つ変えず、当たり前のように手紙を眺めていた」

あ、この声は。

三日月先輩の淡々と話すこの声は…

「それは最初から入ってることを知っていたからだ」

あたしを捕らえて離さない。
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