掃除当番の恋 過去編

第2.6章:ふたり、遠回りの放課後

春休みが近づくある日、部活が休みだった真は少し早めに下校した。
昇降口を出たその瞬間、偶然にも愛花がいた。

「傘、持ってないの?」

「……はい。完全に油断してました」

「ほら、入んなよ」

愛花が差し出した傘に、真は戸惑いながらも滑り込む。

2人の肩がふと触れそうになる距離。
そのたびに鼓動が速くなるのに、どこか心地よかった。

「……公園、寄ってこっか」

誰もいない静かな公園。
愛花がベンチに腰を下ろし、空を仰ぐ。

「真って、なんで掃除当番、ちゃんとやるの?」

「……居場所ができる気がしたからです」

「その中に、私も入ってる?」

「……もちろん、です」

その言葉に、愛花は少し照れたように笑った。

「じゃあさ、春休み……どっか行こっか」

そのひと言が、傘の中の空気を変えた。
ふたりの距離は、静かに、でも確かに近づいていた。
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