恋愛禁止ダンジョン、攻略中。



私と霧島くんは、写真を持って、柊先生の研究室を訪れた。


ドアをノックすると、先生は少し驚いた顔を見せた。
机に写真を置いた瞬間、その表情が一瞬だけ固まる。





「……これは、昔の僕だね」

「じゃあ……隣にいるこの人は?」





思わず問いかけると、先生はわずかに目を伏せた。





「……大切な人だった。今はもう……会えないけれど」





短い言葉なのに、胸の奥がきゅっと締めつけられる。





「どうして、“恋愛研究委員会”なんて作ったんですか?」





霧島くんが静かに尋ねる。


先生は少し黙ったあと、私たちを見て微笑んだ。
けれどその笑みは、どこか寂しさを含んでいる。





「——約束だったんだ。その人と交わした“証明”の約束を」

「証明……?」





私が小さくつぶやく。





「そう。“本物の恋は存在する”と証明すること。
若かった私は、それをどうしても形にしたかった」





その声には懐かしさと未練が入り混じっていて、どこか切ない。


胸の奥で、なにかがざわついた。
“恋を証明する”なんて言葉……どこかで……。
でも、まだはっきりとは思い出せない。





「……ただ、それ以上は話さなくてもいいだろう」





先生は写真を机の端に戻し、穏やかに言った。





「君たちは君たちの答えを見つけなさい。
それが、僕の願いだ」


< 84 / 91 >

この作品をシェア

pagetop