春は、香りとともに。
志野子の指に、惟道の指が重なる。
指先から、胸の奥へ、静かな熱が伝わってくる。
「あなたが、自分の意志でわたしのもとへ来てくれるなら――この先の人生をすべてかけて、あなたを守ります」
「……それなら、わたしも、先生を守ります」
月明かりがふたりを照らす。
惟道が、そっと志野子の頬に手を伸ばした。
そして――やさしく、唇に触れた。
それは、あたたかな、初めてのキスだった。
「今夜……少しだけ、あなたを抱きしめてもいいですか」
惟道の低く、静かな声。
志野子は、ためらわずに頷いた。