その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
編集長が、少し声のトーンを変えた。

その瞬間、私は察した。

話が変わる。――たぶん、もっと“やっかいな”方向に。

「ちょっと、頼みたい作家がいてね。担当、変えてもらうことになるかもしれない。」

背中に冷たいものが走った。

「誰の……ですか?」

「神堂慧。知ってるな?」

私は息をのんだ。

神堂慧――

今、最も“危険”で“売れる”男。

「神堂先生? ……うちの出版社、もう5年くらい書いてもらってないって聞いてますけど。」

私がそう言うと、編集長は手元の書類をペンでとんとんと叩いた。

「それを書かせるのが、お前の仕事だ。」

「……え?」

無茶だ。そんなの。

5年も離れていた作家に、何の縁もない私が、新作をお願いする――?

いったい、どんな顔をして?

「神堂先生、実は2年、新作出してないんだよ。どこでも。」

「え……でも、人気ありますよね? ファンも多いし、連載止まってるって声も――」
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